皆さま
こんにちは、今日はデジタル庁の民間採用で有名な転職サポート会社の話です。
以下の通り海外進出について議論がしたいという事でしたので。
この会社は有料制の転職サイトでこの5~6年で毎年業績を倍に伸ばしている
会社で、皆さんの中にもご存じの方もいらっしゃると思います。
私は以下の文書を持って行き相手の社長室長に見せました。
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テーマ:日本のマーケットでは業績は順調であり成功を収めた。
それでこの度シンガポールに新しい拠点(サイト)を設立したので、
それについてディスカッョンをしたい。
海外でビジネスを経験された方はお分かりだと思いますが、日本と言う島国の
単一市場と、中国、東南アジアではマーケットの性格が全然違います。
中国の労働事情は日本の常識とはかなり違いますし、東南アジアと言っても
国によって、成熟度や文化等色々違いがあります。
従って、日本の様に単一のマーケティング戦略ではなく、各国に合わせた多様な
戦略が必要になってくると思います。
そこで、私はその会社がシンガポール向けに始めたサービスREGION UPの会員
になって中を見て見ました。https://www.regionup.com/jobs/openings/singapore/
思った通り、日本での単一マーケットに対するアプローチとほぼ同じで、それが
国別に分かれていると言う内容でした。エグゼクティブを対象としているので、
当然給与が高い案件がほとんどで、給与レベルは日本と同じくらいでした。
例えば中国とシンガポールとマレーシアとバングラディシュとタイ等では国情も違いますし、
求人企業の悩みも違います。それには対応しきれていないなと思いました。
中国は経験もありますが、社員の会社に対するロイヤリティーなど全くと言っていいほどなく、
条件が良ければすぐ辞めて他に行ってしまいます。昔中国でコンサルティングファームプライムの案件
にコンサルタントを多数アサインしたら、そのファームの給与を知った彼らは
全員そのファームに転職したこともあったと聞いています。
シンガポールは資源も何もなく、ライフラインをマレーシアに全て依存していますので
製品を生み出す能力はありません。それを、この前亡くなったリー・クアンユー氏が、
金融と物流と観光に注力し、アジアで一番豊かな国にしました。
従ってシンガポールには、APACの本社機能、物流拠点、金融機関、観光地しかなく
国全体がコストセンターみたいな状態で成熟していて動きは少ないですが、
エグゼクティブ案件の比率は高いと思います。
マレーシアはシンガポールと全く逆で、日本の高度経済成長期に当たり経済は伸び人口も
増加し人手不足が慢性化していて、インフレ気味です。
ただほんの一握りの大企業がほとんど資産を独占していて、賃金格差も大きく
エグゼクティブ案件が出てくるのはもっと先かなという感触を持っています。
バングラディシュは日本の戦前の状態によく似ていて、主な産業は織物や製糸業等所謂軽産業
が中心で、先進国のブランドメーカーに安く原材料を輸出している構造になっています。
今国を挙げて付加価値のある製品を持とうと、国策会社がいろいろやっていますが状況は変わらず、
低賃金労働者市場になっています。ほんの一部の富裕層が日本に投資して
事業の多角化を図っている状態です。
タイは、識字率も高く、国民も優秀なので活気はありますが、低賃金市場だとおもいます。
彼らの夢な高学歴を手にして外資系のITエンジニアなどを目指しています。
事実SAP Thailandのプロジェクトマネージャーの賃金はタイの会社の数倍と聞いた事があります。
以上の様に全く市場が違うので、国も選ばなければならないし、業界の構成もかなり違います。
それなりの案件が出てくるのは、シンガポール、香港、インドなどではないでしょうか?
それら全てに対応するのもオーバーヘッドがかかるので、日本と同じプロセスでそれなりの案件が
出てくるエリアに絞られてくるのは仕方がないかなと思います。
後は、日本のその会社の仕事かもしれませんが、日本人管理職の案件は少なからずあると思います。
それと、これは日本の他の転職会社も含めて言える事ですが、「転職サポート」を言いながらやっている事は
単なる「転社サポート」です。それもヘッドハンターに丸投げで、彼らの範囲でしか動きません。
例えば、社長になりたいのだけどどうすればいい?とか、全くの異業種に行きたいのだがどうすればいい?
とか、起業したいのだけどスポンサーを紹介してくれない?等と言ったニーズには全く答えられていません。
ただのディスパッチ業で、たまたまエグゼクティブ案件が多いので事業が伸びているだけです。
私の知り合いに医師の転職ビジネスの認可を厚生省から一番に受けて、大きく事業を伸ばしている社長
がいます。
彼は、医師の転職(正確には転院)サポートのマーケットは狭く、競合が出てくれば過当競争になる事を予想して、今では病院の開業や経営のコンサルティングまで手がけています。
まとまりにくいですが、要するに転社商売には限界があり付加価値のあるサービスを考えてサービスを
作って行かないと、早晩パイの取り合いになります。
ビジネスパーソンの総合キャリアカウンセラーを目指すべきだと思いますし、それにはグローバル化は避けて通れないので、グロ-バルビジネスパーソンの養成等も視野に入れないと、グローバルで通用するビジネスパーソンがいなくなり、売りものがなくなってしまうと思います。
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相手の社長室長からは、読むなり「その通りです。でも日本のモデルを変えるつもりはありません。」
「ですから、日本と同じモデルが使えるシンガポールと香港のみをマーケットと考えています」
「日本でのオペレーションも変えるつもりはなく、求人者や採用企業がどうなるか等と考えていません」
「事故が起きているのも事実ですが、改善するつもりもなく、お金さえ入ってくればいいんです」
と言う返事でした。
自分達の成功経験が絶対で、見直す気もなく、人の話を聞く態度ではありませんでした。