今回は、多重下請け構造についてです。
IT業界では、SIベンダーを頂点とした多重下請け構造は、当たり前の様になっています。
SES、請負契約等派遣法の抜け道の様な契約形態がSIベンダーや手配師ベンダー、人売りベンダーの都合の良い様に運用されて来ました。
これらは早い話、「多重ピンハネ」です。
システム開発のサプライチェーンを長くして、実際に働く技術者の収入を減らし、ITはブラックとの印象を根付かせました。
多重派遣、SESの多重契約は禁止されています。しかし、請負契約があるため多重下請けがまかり通っています。
この構造は、IT業界に限った事ではなく、建設業界やイベント業界等にも顕著で、日本社会の病根かもしれません。
最近では、オリンピックを巡る多重下請けやコロナ対応での多重下請けも問題になりました。
しかし、公の場で追求された事はありません。
多重下請けに関する記事の抜粋を紹介します。
「さて、ここで客のIT部門、あるいはSIベンダーが「再委託はせいぜい3次請けまで」と言い出したとしよう。はたして手配師ベンダーに何か問題が生じるだろうか。
委託契約がメインだから、SES契約は再委託が原則禁止でも、いつもと同じように契約すれば客のIT部門やSIベンダーの言い付けを守ったことになる。
もちろん人売りベンダーは、そんなことを知っちゃいない。SES契約で頭数を揃えれば良い。手配師ベンダーの現場の技術者は気付く可能性はあるが、そんなことはどうでもよいから気付かぬふりを決め込むだろう。
何らかの事情で多重下請けを建前上だけでも禁止せざるを得ないとき、このSES契約の特性は極めて便利なツールとなる。例えば勝手な再委託を認めないのが建前の地方自治体の業務委託においては、極めて有効となる。
いずれにせよ、再委託を禁止にしたり、多重下請けのサプライチェーンを短くしたりしようとするのは良いことだ。
結局のところ、労働集約型で需要の変動が激しい人月商売においては、需要に合わせて効率良く技術者を調達する仕組みが不可欠なのである。人月商売のIT業界は20年前、30年前と何も変わっていないのだ。多重下請けに基づく人月商売から脱却できないのなら、少なくとも健全な産業のふりをしないでもらいたい。」
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