さて今回は、気分転換をしたところで、失敗プロジェクトのご紹介です。
よくグローバルプロジェクトと言う言い方をしますが、その中の一つである、ロールアウトプロジェクトについてです。
日本から見れば、海外から日本に入ってくるプロジェクトは、ロールインではないかと思う方が多いのですか、あくまでロールアウトの主体から見るので、ロールアウトです。
日本を主体に見たいなら、広い意味でインバウンドの一種でしょう。
紛らわしいですが、今回のプロジェクトの定義は「日本からドイツへのロールアウト」のケースです。
日本に本社がある、産業用ロボットの精密部品メーカーで、技術力で国際競争力がある会社でした。
先に日本での導入が済んでおり、その内容をドイツの販売会社にロールアウトすると言うプロジェクトでした。
ソリューションはSAPで、担当したのは日本のSAPパートナー企業で、開始時期は2014年前後、SAP Japanではあまり実績がない「日本初世界へ」のケースです。
通常のロールアウトプロジェクトは、この会社の場合、日本に導入済でしたから、そのシステムをベースにテンプレートを作成して、顧客主体でグローバルロールアウトチームを作り、ドイツの現地パートナーが技術的なサポートをします。
ところがこのケースは、日本のパートナー企業が一括で請け負って、そのパートナー企業のドイツの子会社に丸投げをしました。
当然テンプレートがないので、丸投げされたドイツのパートナーは新規作成の体制で導入を開始しました。
ドイツではパートナー企業はあくまでもサポートで顧客主体が常識です。
それに加え、精密機器会社のドイツ法人は20名足らずの社員でほとんどが現地採用です。
納期近くに、マスターや移行データーが間に合わなくなり、私が急遽現地に行きましたが、手遅れでした。
何とか間に合わせても、ユーザーのトレーニング体制が無く、稼働は無理との判断で、急遽日本のシステム担当が派遣されましたが、それでも改善は見られず。
最終的には、日本本社のCEOの判断になりました。
CEOの話で分かったのは、このロールアウトプロジェクトのゴールは、単にドイツ販社に似たようなシステムを導入することではなく、ドイツ販社を欧州本社にしてヨーロッパに点在する現地法人をホールディングカンパニーとして統合することでした。
ここまで、トップの意思と外れた作業をしたのですから、プロジェクトはいったん中止でした。
今思えば、本社CEOが最終的に正しい判断をしたと言えます。
何のためのシステム化を考えず、業者に丸投げして業者の都合で進めたプロジェクトの一例ですが、発注側もソリューションを提供したSAPも基本を外して正しいガイドが出来なかった事例です。
ちなみに、この様なロールアウトプロジェクトはパートナー企業では無理で、通常SAP Japanのコンサルティングサービスが担当するのですが、この当時、SAP Japanはコンサルティングサービス部門を事実上廃止していました。
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