今回は、前回に続いて総合商社のプロジェクト事例です。
前回は、日商岩井プロジェクトの背景や商社の取引形態・契約形態についてお伝えしました。
今回は、新しい契約別管理会計システムを設計開発するに当たっての管理指標や商社の事業規模を把握するための指標についてです。
以下、順に解説します。
1, 取扱高
一般的に会社の事業規模は売上高で把握しますが、商社の場合は取扱高です。
売上高は、商品を仕入れて販売した時の販売高・建設・プロジェクト物の工事進行基準に
よる売上高に加えて、エージェント契約時の紹介案件の規模、つまりコミッションの元に
なる商社を通過した伝票の金額が加わり、かなり大きな金額になります。
これは、富士通やIBM等のSIerが下請けに丸投げした時の伝票通過料と似ています。
また、最近のNTTドコモのd払いなどスマホ決済を通話料と計上するのも同じです。
2, 契約残
一般の製造業やサービス業の残高管理は債権債務残高です。商社にもそれはありますが、
商社の場合契約全体に対して、まだ顧客に履行していない残高、所謂バックログの管理が
非常に重要です。
顧客に対する履行義務と、将来の債権残高見込みですから、事業計画やデリバリー計画の
根拠となります。
ここで難しいのは、契約行為では会計伝票は発生しないため、会計上の残高とは別管理に
なることです。
有名なコンサルティングファームのパートナーは総勘定元帳で把握できると言っていま
したが、不可能です。
3, 為替ポジション
貿易では、取引通貨によって為替相場の影響を受けます。
TTB/TTSは毎日金融機関から発表されますが、それを契約残や債権債務残、場合により
在庫に読み替える必要があり、それはリアルタイムでも可能です。しかし、実際のオペレーションを考えるとデイリーでデーダベーを作成しておき、管理者が必要に応じてオンライン帳票リクエストで入手する仕組みが必要です。
4, 帳尻金利
これは、一般の企業体には少ないと思います。
商社は様々な事業体(事業部)の集合体ですが、為替相場により輸出がダメな時は輸入
でカバーしたりしています。
その延長で、余裕のある事業部が新しい他の事業部の取引に資金を出して利します。
その社内金利の事を指して、外部からの借入金の金利支払いを社内金利で相殺したり
することもあります。
ただ、これはあまりそのようなケースが多いと商社に業績を正確に把握することの妨げ
になることもあり、企画室等が帳尻金利の実態を把握して監査に使います。
他にもいろいろありまが、以上4点を把握しておけば、商社の管理指標としてはほぼ
大丈夫です。商社相手のビジネスを推進する方は参考にしてください。
次回は、プロジェクトの技術的な特徴や、要員の教育訓練に触れていきます。
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